賃貸住宅を撤去する際のトラブル
相談事例
5年間住んだ賃貸アパートを退去したが貸主から敷金が返還されないばかりか、汚していないクロスやフローリング張替え費用を請求された。
相談員からのアドバイス
賃貸住宅のトラブルは、ほとんどが退去時に起きています。トラブルを回避するためには入居時の契約の際にきちんとルールを確認することが大事です。部屋を探す際、通勤に便利、部屋の間取りなどで決めることが多いですが、物件そのものや「重要事項説明書」に記載されたことをしっかり確認して決めましょう。
「重要事項説明書」は、不動産事業者の仲介で借りる場合、必ず書面で渡され、宅地建物取引主任が主任者証を提示の上、説明することが法律で定められています。相談事例のような退去時の連絡時期や敷金の返金についても「契約の解除予告期間」「敷金などの清算」として記載されています。
賃貸住宅の相談の中でトラブルの最も多い、原状回復の費用負担に伴う敷金の清算については、国土交通省のまとめた「原状回復に関するガイドライン」で一般的な基準が示されています。原則として「経年変化による自然損耗や通常使用による磨耗(日照による畳や壁の変色など)」については支払ってきた家賃に含まれるという考え方で、原状回復の費用は貸主の負担とされます。借主の故意や不注意により破損をして損害が出た場合に限り借主負担となります。
また、この事例のような退去時の連絡時期については、標準契約書によると「解除通告は1カ月前」となっています。不動産事業者は契約書の内容を主張してきますが、上記の「ガイドライン」や「標準契約書」を根拠に交渉してみるとよいでしょう。
「戻ってくるはずの敷金が原状回復費用の清算により戻ってこない」というトラブルの場合、金額が60万円までは、少額訴訟制度を利用する方法もあります。同制度利用でこの事例が最も多いのは、敷金返還に関するトラブルが多いことを示しているともいえます。
敷金や原状回復義務については、これまで民法には定めが設けられておらず、「敷金が戻ってこない」「高額な修繕費を請求された」などのトラブルが多数ありました。そこで2020年4月より民法が改正され、以下のとおり定められました。
敷金の定義や返還期間・返還範囲のルール
- 敷金とは、家賃を滞納したり部屋の施設を壊すなど契約違反をしたときの損害賠償の担保として借主から貸主に預ける金銭を言います。
- 貸主は賃貸借契約が終了して賃貸物が返還された時点で敷金を返還する義務を負います。(撤去前には返してもらえません)
- 貸主は敷金から未払家賃や損害賠償金、原状回復費用を差し引いて返還することができます。ただし、借主からは滞納した家賃などの債務を敷金から差し引くよう請求することはできません。
借主の原状回復義務
- 借主の故意や不注意、通常でない使用方法によるキズや汚れなどは、賃貸借終了時に原状回復義務を負うことになります。
- 通常損耗や経年劣化、その他借主の責任で生じていないものについては、義務を負いません。
重要事項説明書
重要事項説明書に記載される主な内容は、次のようなものです。
- 物件の表示(物件の所在、構造、面積など)
- 登記簿に記載された事項(所有者の氏名、住所、抵当権などの有無など)
- 設備の整備状況(台所、浴室、便所、そのほかの設備)
- 契約の期間、および契約の更新に関する事項
- 利用の制限に関する事項(使用目的、使用規則など)
- 契約の解除、損害賠償の予定に関する事項(契約の解除予告期間など)
- 契約の終了時における金銭の清算に関する事項(敷金などの清算)
- 管理の委託先、および管理形態
- そのほか、法令の制限など
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